青い星☆

 

 

 

夢を見ました。

 

私は、その時まぶしい光の中にいて、魂だけになっていました。

 

そして、なぜか色んな世界が一度に見る事が出来ました。

 

どうしてかわかりませんが、順番に見るのではなく、一度にすべてを理解できる感じです。

 

一つの星に強く惹かれました。

 

その星はとても地球によく似ていますが、地球よりも透明感があって、何だかふわっとして、とても美しく輝いている感じです。

 

今度生まれるなら、こんな星に生まれてみたいと、強く思いました。

 

 

 

 

 

気が付くと、その星にいました。

 

身体は、人間のかたちをしていますが、のっぺりとしていて、重量感が無くて、少し透き通っている感じです。

 

動いてみるととても軽やかな感じで、運動の苦手な私は、スポーツ選手ってこんな感じなのかな、と思いました。

 

 

 

体に慣れて、あたりを見渡すと、そこは美しい森で、細い幾筋もの滝が流れ、小さな虹が沢山架かっていました。

 

うっとりと見とれていると、いつの間にか自分と同じような体をした人たちが、どこからともなく現れて、優しくこちらを向いて、微笑んでいます。

 

みんな、うすい絹の様な光沢のある、柔らかな布をまとっていました。

 

目が合うと、

 

「初めまして、ようこそ!! とても素敵な星でしょう?」

 

と聞こえたように思えましたが、声を発しているわけでは無く、ただ微笑み続けているだけのようにも見えました。

 

「初めまして・・・」

 

と答えようとしましたが、自分も声が出て無い事に気が付きました。

 

回りを見ると、まだ優しく微笑み続けています。

 

そして、人数がどんどん増えています。驚いてみていると、自分たちがまとっているのと同じ布を差し出し、

 

「よければ着て下さい。私が作ったものです。」

 

と微笑みました。

 

受け取って、お礼を言おうとすると、

 

「驚かれましたか? この星では、誰かがとても強く喜んだり感動したりすると、みんなそれを感じて、そこに集まって来るのです。そして、みんなで分かち合います。直ぐになれて、ここがとても気に入ると思いますよ。」

 

「皆さんはどうやって来られたのですか?」

 

と微笑み返してみました。

 

「ただ、そこに行こうと思うだけです。」

 

心の中に答えが響きました。

 

行こうと思うとどこにでも行けるので、乗り物は必要ないそうです。それどころかこの星には、どこもここと同様に、人工的なものが一切ないようです。

 

家さえも・・・。

 

ここでも、雨も降るし、冬もありますが、好きな所に瞬時に行けるので、みんな、お気に入りの木陰で、休むそうです。

 

別の人が、フルーツの様な食べ物を渡してくれました。そして

 

「私たちは、食べる必要はありませんが、風味を味わいたい時だけ、好きなものを口に含みます。」

 

と教えてくれました。もちろん微笑みながら・・・

 

その、丸くて、小さな淡いオレンジ色のフルーツは、口に入れるととても優しい甘さと香りが広がり、すぐに溶けてしまいました。

 

この星に、自生する果物や野菜は、口に含むと光となり、自分たちのオーラに溶けるそうです。

 

だから、トイレさえいらないのです。

 

 

 

探検

 

 

 

集まった人たちの中の2人が、この星を、案内してくれることになりました。

 

リラックスするように言うと、二人は私の手を取って目を閉じました。同じように目を閉じると、一瞬浮き上がった感じになり、手が離れたので、目を開けると、全く違う場所にいました。

 

 

 

そこは崖の上、眼下には目の覚めるようなエメラルドグリーンの海が広がっています。高い崖の上からでも、色とりどりの魚が泳いでいるのが見えます。

 

その海に、入ってみたいと思って眺めていると、いつの間にか崖の下にいて、足首まで海に浸かっていました。 

 

沖の方でイルカが跳ねました。こちらに向かって来るようです。一緒に来た二人がイルカに向かって手を振っています。あっという間にすぐ近くまでやって来ました。

 

「こんにちは 」

 

びっくりしました。イルカがしゃべったように思ったのです。

 

二人は私を見て微笑み、イルカに答えました。

 

「こんにちは、新しいお友達も一緒です。」

 

そして私の方を向いて

 

「この星では、全ての生き物とお話しできるんですよ。」

 

「さっきの森でも、動物たちや、木々たちがあなたと話したそうにしていました。でもみんな驚かさないように、静かにしていたのです。」

 

私は驚いて

 

「木も話せるんですか?」

 

と聞くと

 

「ええ もちろん」

 

「また後で、ゆっくり行きましょうね。」

 

と二人はまた微笑みました。

 

「海の事を知りたくなったり、泳ぎたくなったら、このイルカさんに聞くといいですよ。直ぐに慣れて誰とでも話せるようになると思いますが。」

 

 

 

その時、空から長くてキラキラ光る青い尾羽を付けた、鳥が空からやって来ました。

 

「ようこそ 初めまして」

 

その鳥は、私に直接話しかけてくれました。

 

「初めまして とっても綺麗ですね。」

 

私は、思い切って挨拶してみました。

 

するとその鳥は、

 

「ありがとう」と言いながら

 

嬉しそうに何度もクルクル回りながら飛んで、小さな水色の羽根を落としてくれました。ふんわり飛んで来る羽根を手のひらで受け取ると、柔らかさと温かさを感じました。

 

それを見ていた二人は、にこにこしながら、

 

「もう、あなたはここで十分楽しめそうですね。」

 

「空の事や、高い場所の事などは、この鳥に聞くといいですよ。」

 

私は二人に向かって

 

「この星にいる人、動物たちもみんな優しくて親切なんですね。ほんとこの星を選んでよかったです。」

 

「私たちも、楽しみにお待ちしていました。」

 

「私が来るのを分かっていたという事ですか?」

 

「ええ、そうです。この星の全ての存在があなたを受け入れたのです。」

 

私がキョトンとしていると

 

「私たちの中には、未来が見える者も、過去と未来を言ったりできる者も大勢います。さっきのイルカも未来がわかるのですよ。そしてこの青い鳥は未来にも過去にも行けます。」

 

とにこにこしながら、私を見つめました。もう一人が

 

「あなたが、ここにいるという事は、みんなに愛されているという事ですよ。ここにいるもの、あるもの、海の水の一滴でさえ愛が含まれてないものはありません。」

 

「あなたも愛で出来ているという事です。」

 

二人は私を優しく見ました。そして、手を取って言いました。

 

「じゃあ次は、一番高い丘に行ってみましょうか。」

 

 

 

軽く触れた、二人の手の柔らかさと温もりを、一瞬感じただけで、大きな木のある丘に着きました。

 

そこからは、とても豊かな、明るい感じの森が、眼下に見渡せました。

 

その森の向こう側に、さっき見たような滝がありました。

 

「そうです。 あれはさっきの滝です。」

 

聞く前に教えてくれました。

 

「この時期は、あの森のあたりが、一番心地いいので、多くの人がその辺にいます。どこか行きたい場所はありますか?」

 

と聞かれました。

 

「さっきの場所で、私と話したがっていたという、木に会ってみたいです。」

 

というと、可笑しそうに笑いました。

 

「あなたの後ろにある、その大きな木も、さっきからあなたに話しかけるきっかけを待っていますよ。あなたと話したことは、すぐに全ての木に伝わります。この星にいる全ての木に。」

 

私は、その大きな木を見上げました。そしてそっと手を触れてみました。

 

ごつごつした木肌なのに、とても優しく、暖かささえ感じました。すると、

 

「触れてくれてありがとう」

 

と聞こえた様に思えました。そして、木の葉がさわさわと優しく揺らぎました。私は

 

「お話ししてもいいですか?」

 

と話しかけてみました。すると

 

「もちろん 喜んで。私たちはみんなあなたを歓迎しています。ようこそこの星へ。」

 

と答えてくれました。

 

「ありがとう。素敵な星ですね。」と言うと

 

「ええ もうあなたもこの星の一員です。」と、また答えてくれました。

 

「とても見晴らしのいい所ですね。」

 

色々話したい気持ちはあるのですが、何を話したらいいか分からず、そんな言葉しか出ませんでした。

 

「ええ とても。色んなものが見え、飽きる事がありません。それに、私たちは地中深く伸ばした根から、この星のエネルギーを感じ、高く伸びた枝先からは宇宙のエネルギーを感じます。ここにじっとしていても全てを感じる事が出来、とても楽しく過ごしています。」と教えてくれました。

 

「すごいですね。」と驚いていると

 

「この星にいる木はみんなそうです。分からない事や知りたいことがあれば何でも聞いてください。あなたの一番近くにいる木に。どの木も喜んで答えてくれます。みんなあなたと話したがっています。木も他の生き物と同じぐらい好奇心旺盛なのです。」

 

葉が、ふわぁっふぁ~と揺れ、何だか笑っているように感じました。

 

嬉しくなって、幹に腕を回し、抱き付いてしまいました。木に触れている全ての部分から、優しさがしみてくるように感じました。これは、さっき聞いた、この星にある愛なんだろうか…と考えているとそれに応えるように、また葉が揺れました。もう言葉がいらないくらい、私の事を分かってくれているような気がしました。

 

太陽が傾き、丘から見える全てが、オレンジ色に輝いていました。

 

みんなで一緒に、大きな木にもたれ、夕日に照らされた、空や海や森を感動と優しさに包まれながら、ゆっくりと眺めました。

 

 

 

森の中

 

 

 

はじめに着いた森に戻りました。今度は自分でその場所を思い浮かべるだけで、初めて立った岩の上に移動出来ました。

 

近くにある木々を見回しました。どの木もさっきの丘の上の木のように、優しく受け入れてくれているように感じます。そんな気がしたとたん森全体を優しい風が渡っていきました。風にも意志があるように思えました。

 

目の前の木に、手を振ってみました。少し葉が揺れ

 

「お帰りなさい、他の場所はどうでしたか?

 

 丘の上の木は、とても喜んでいましたよ。」

 

と、話しかけてくれました。もちろん声が聞こえるわけではありませんが。

 

「ありがとう 私もとても嬉しかったです。そしてどこも全て、本当に素敵でした。きっとこの星のどこに行っても素敵なんでしょうね?」

 

「ええそうです。私たちはここにいながらも、みんなの愛を、感じる事が出来ます。みんなが喜びに満ちています。」

 

木に近づいて、触れようとして上を見ると、毛足の長い黒い猫が、こっちを見ていました。

 

「この猫は、あなたと同じ世界から来たんですよ。あなたと同じようにここが気に入って、よく来てくれます。」

 

「私と同じ世界?」と考えていると

 

「地球という事」と猫がしゃべったような気がして、上を見ると、さっきと変わらず上の枝に背を丸めて座り、私を見つめているだけでした。

 

 

 

あたりはすっかり暗くなって来ました。

 

空には一面の星空が広がり、一つ一つの星が動いているように煌めいていました。

 

生きているみたい、と思っていると

 

「その通り、星はみんな生きています。私たちが、細胞からできているように、星も一つ一つの命からできています。あの輝きは、そこにある命の喜びです。」

 

「ここに住んでいる、人達や動物、植物全てが、喜びに満ちれば満ちるほど、この星も輝きを増していきます。」

 

私は納得しました。どうしてこの星に惹かれたのか、ここに来たかったのか。

 

 

 

私は、段々と眠くなって来ました。でもまだ眠りたくなかった。リアルに感じながらも、どこかでこれが夢だと知っていたから、眠ってしまうと元の世界に戻ってしまうと思ったから・・・まだまだここにいたかったのです。

 

すると

 

「大丈夫です。私たちはいつでも会えます。あなたが会いたいと思ったその時に。」

 

「あなたが、この星で喜んでくれた事、感動してくれた事にとても感謝しています。」

 

そう言ってくれた人だけでなく、そこにいた全ての人達や、一緒に星を見ていた動物たち、木々達までが、私を慈しんでくれているのを感じました。

 

私は、みんなに愛おしさ、暖かさを感じながら眠りに落ちていきました。

 

 

 

目が覚めると、自分の部屋のベッドにいつものように寝ていました。

 

頬につたっていた涙をぬぐうと、夢の中で感じていた温もりが蘇って来ました。そして本当にまた会えるような気がしました。

 

 

 

再び青い星へ

 

 

 

窓のカーテンを開けると、まぶしい朝の光が入って来ました。

 

ふと下を見ると、向かいの塀の上に、黒い猫がいました。よく見ると毛足が長く、夢で見た黒猫にそっくりです。思わず手を振って「おはよう」と言っていました。猫はそのまましばらく上を向いていましたが、すっとどこかに行ってしまいました。

 

 

 

仕事に行くために駅に向かって歩いていると、またその猫が、塀の上からこっちを見ていました。回りに誰もいないのを確認して、

 

「ゆうべの猫じゃないの?」

 

と聞いてみました。猫は、またじっとこっちを見ていましたが、どこかに行ってしまいました。地球では話せないんだろうか・・・と考えている自分に気づき、昨日の夢を完全に正夢だと思ってる自分がおかしくなりました。

 

 

 

いつもと変わらない一日が過ぎ、ベッドに入りました。

 

昨夜のリアルな夢を思い出しながら、本当にあんな世界があればいいのに、地球もいつかあんな風になるんだろうかと考えていると、自分が会いたいと思えば、いつでもまた会えると言っていた事を思い出しました。

 

 

 

布団の中で、手を合わせ、どうかまたあの夢が見れますようにと強く願いました。そして、そのまますぐに眠ってしまいました。

 

 

 

気が付くと、滝のあるあの森にいました。

 

私は、眠りについた木の下にそのままでいました。まるで、地球にいる夢を見て、目覚めたようです。木に聞いてみました。

 

「私はどうしていましたか? いなくなっていましたか?」

 

「いいえ、あなたの体は、ずっとここにあり、とても気持ち良さそうに眠っていました。」

 

と木は教えてくれました。本当に地球に帰った夢を見ただけなんだろうか・・・と考えていると、近くにいた人が、

 

「あなたが、この星で得た体は、ここでしか使えないのでここに残ります。あなたの魂だけが、行ったり来たり出来るのですよ。」

 

と教えてくれました。そして

 

「魂は眠る必要も、休む必要も無いので、いつでも好きな所に行けるのです。でも、この星の体も、あなたが慣れるまで、地球ほどではありませんが、休ませる必要があります。だからこの星に慣れていない多くの人達も、あなたと同じように、身体を休ませて行ったり来たりします。」

 

「ありがとう 不思議な事が本当にたくさんあるんですね。」

 

「私たちには、地球にもたくさんの不思議な事があるように思えますが・・・ここは地球よりもずっとシンプルですよ。」

 

と、とても親しげな笑顔で教えてくれました。

 

「地球に行かれたことがあるんですか?」

 

「ええ ここにいる、かなり多くの人が地球に遊びに行っています。そして、乗り物を楽しんだり、不思議な料理を楽しんだりしています。」

 

その人は、さらに楽しそうな笑顔になりました。

 

とても、親しみやすい感じだったので、ずっと不思議に思っていた事を思い切って聞いてみました。

 

「あの・・・変な事をお聞きしますが、この星の人達の性別はどうやってわかるのですか?」

 

私は、他の人だけでなく、自分さえここでは、男なのか女なのか分かりません。食事をしないので、良く分かりませんが、生殖器だけでなく、内臓さえ無いのではないのか、と感じています。

 

「この星の人に、性別は無いんですよ。あなたのように、この星に来たいと思った魂に、身体が与えられるので、繁殖する必要はないのです。だから地球のように、血縁関係とかはありません。あ・・でももう少し大きくなりたいとか腕が長い方が良いと思えば、ここに来てから少し変われます。だから僅かですが、外見的にも個性があります。」

 

と、とても優しく教えてくれました。

 

 

 

黒猫との会話

 

 

 

そうなんだ~とあちこち自分の体を撫でたり、つかんだりしながら確かめてみました。つるつるで、心地いい弾力のある、半透明の肌はとても美しく、他の人も、微妙に違うけれど、それぞれにとても綺麗でした。

 

ふと視線を感じて、上を見上げると、昨日の黒い猫が、じっとこっちを見下ろしていました。

 

「あなたの体は、変わらないの?」

 

と聞いてみました。

 

「人間みたいに、身体を変える必要なんかないよ。僕たちははじめっから、星や次元を行き来できるようになってるから」

 

とこっちを、じっと見つめ続けました。

 

「地球であったのは、あなたなの?二回とも?」

 

「そうだよ。覚えてるかなと思って・・・」

 

「私の言ってる事分かってた?」

 

「もちろん。 でもそっちは分からないんでしょ?」

 

会話というか、私たちはただ見つめあってるだけでしたが、とても不思議で、でも当たり前のようにも感じました。

 

 

 

黒猫がしゅっと枝から、すぐ私の目の前に降りてきました。

 

「ちょっと、僕の背中に触れて。」

 

と背中を差し出したので、そっと長めのやわらかい毛に触ると、何か引っ張られるように感じ、別の場所に移動しました。

 

 

 

着いた所には、雪が少し積もっていました。ほんのちょっと肌寒いくらいで、うすい布一枚なのに、寒さはあまり感じません。

 

直ぐ近くに木の小屋がありました。この星で、建物らしきものを見たのは初めてです。黒猫を見ると、

 

「多分、この星で、家らしきものはここだけかもね。」と教えてくれました。

 

「誰か住んでるの?」

 

「うん」と言って、小屋に近づいていきました。

 

 

 

小屋の前面には壁が無く、中で焚火をしていました。私たちに気が付いて

 

「やあ こっちに来てあたりなよ。ずっといるとさすがに寒くなるから。」と言って、中に招いてくれました。

 

「ここに住んでおられるんですか?」

 

「そう、ここには四季があるからね。ここが大好きなんだ。君はこの星に来たばかりなの?」

 

「二回目です。滝のある森や、丘の上や海に行った事があります。」

 

「私もここの寒さに飽きたら、時々丘の上に行くよ。」

 

黒猫が、その人の膝の上に乗って、撫でてもらい、気持ち良さそうにゴロゴロ言っています。

 

「この子は、焚火が大好きでね。火を点けるとすぐに来てくれるよ。」

 

黒猫はこっちを見ながら、

 

「多分、ここが一番、今地球で住んでるとこに近いかもね」

 

と言いながらお腹を向けて、撫でるように催促しています。

 

「私も、地球で暮らしたことがあるよ。面白い所だね。」

 

いっぱい聞きたい事があったけど、とりあえず、

 

「どんな生活をしていたんですか?」

 

と聞いてみました。

 

「今と変わらない」と言って、大笑いしました。

 

「山の中で、こんな風に小屋を建てて、木や動物とは話せるから、色々教えて貰った。」

 

家とか、職業とか私の疑問はあっさりと消えてしまいました。

 

 

 

揺れる火を見ながら、地球での事や、この星の事色々教えて貰いました。

 

木々たちは、ほとんど同じだけれど、この星の動物たちも食べる必要はないので、人間同様少し、雰囲気が違うそうです。

 

確かに、目の前で寝そべっている黒猫も、地球で見る時より微妙にふわっとしてて軽やかです。前回会った、イルカや青い鳥も少し輝いて見えました。

 

今度はどんな動物に会えるか楽しみだな…と思っていると

 

「なら 草原に行くといいよ。そこは今初夏で、とても気持ちいいし、色んな動物が集まって来てるよ。 案内してあげれば?」

 

と黒猫の方を見ると、黒猫は面倒くさそうに起き上り、こっちに来て背中を差し出しました。

 

 

 

サバンナ

 

 

 

着いた所は、テレビで見たアフリカのような感じでした。

 

黒猫は「じゃ 戻るから」とすっといなくなってしまいました。

 

 

 

小さな泉が沢山あって、どの泉からもきれいな水が湧き出ているようでした。その泉の全てに、色んな動物や人もたくさんいます。

 

本当のアフリカのように、ゾウやライオンもいますが、ホッキョクグマの様な白い熊や、地球では見かけないような動物もいます。

 

一番近くの泉には、キリンが長い足をたたんで、座っていました。ゆっくりと近づいていくと、

 

「あら もしかして地球から来たの?」

 

とキリンがこちらを見て何の警戒もせず、首を傾けました。

 

「あっはい・・・わかるんですか?」

 

「ええ 私たちも地球から来たの。生活できる場所が狭くなって暮らしにくくなったから、家族で来たの。」

 

と向こう側に同じように座っている小さなキリンの方を見ました。さらに少し向こうにも、少し大きな二匹が楽しそうにじゃれ合っています。

 

「ここには、地球から来た仲間が沢山いるの。ライオンや豹たちも狩りをする必要が無いから、のんびり仲良くしてるのよ。」

 

 子供がいるので、動物にはオス、メスがいるのかなと思っていると、

 

「ここに来ると、性別は無くなるというか、繁殖はしないわ。子供はちゃんと成長するけれど、あまり親のする事は無いの。」

 

と、愛おしそうに隣の子供に、首をからませました。

 

「だから、ここにいる動物の子供達は、他の星で生まれた子ばかり。みんな歓迎してくれて、とても優しくしてくれるのよ。さっきまで、この子はライオンにおっぱい貰ってたのよ。」

 

向こうの方にいる、ライオンやヤマネコたちを見て、行こうかどうしようかと迷っていると、キリンが

 

「大丈夫よ。」

 

と優しく私を促しました。キリンが微笑んでいるように見えました。

 

 

 

またゆっくり歩いていきました。ライオンも気になるし、回りも見たいとこだらけです。泉の回りの脊の高い木はとても不思議な形をしていたし、草もキラキラと輝いているようでした。

 

「やあ 地球のお友達。」

 

少し離れたところから、ライオンが優しく声をかけてくれました。私を怖がらせないようにしてくれているという事が伝わって来ました。

 

ありがとうという気持ちで、ライオンにまっすぐ近づいて行くと

 

大きな手を少しあげて、歓迎してくれました。

 

私は両手でその大きな手を持ち握手しました。そしてたてがみに顔を埋めました。大きく包み込むような優しさが伝わって来ます。

 

どうして怖い動物だと思い込んでいたんだろうと、申し訳なく思うくらいでした。

 

「仕方ないさ 私たちは地球では生きていく為に、他の動物を捕獲する必要があるからね。」

 

「ここはとても素敵な所ですよね。 動物たちみんなここに来たいと思うんじゃないですか?」

 

「そうだね。 でも地球にもたくさんいい所はあるからね。それぞれだよ。」

 

「地球のいい所?」

 

今の私には、何もかもがここの方が素晴らしく思えて、何一つ思い浮かびませんでした。

 

そのままライオンにもたれて、回りを見まわしながら、ライオンの温もりや優しさが、染み込んでくるような感じを楽しんでいました。

 

 

 

再び小屋へ

 

 

 

どれくらい時間がたったのか分からなかったけれど、一旦焚火のある小屋に戻る事にしました。

 

小屋の前に着くと、小屋の主と黒猫はさっきと同じようにまだ焚火に当たっていました。

 

「どうだった?」

 

一人と一匹は同時に私の方を向きました。

 

「すんごい素敵で、また行きたいと思います。」

 

「そうみたいだね。」

 

と楽しそうに笑いました。

 

いっぱい話したい事があったのに、話さなくても全部伝わってしまうので、ちょっと残念な気持ちになりました。すると黒猫が

 

「どうして 面倒臭くなくていいじゃん」

 

とこっちを見つめています。

 

まあどんな風に伝えたらいいか分からないほど、感動してたので、それも一理あるかもとも思いました。

 

前回、色々案内してくれた人の名前を聞かなかったことを、後悔していたので自己紹介することにしました。

 

「あの 素敵な所を教えてくれて、ありがとうございます。私はハルヒと言います。これからもよろしくお願いします。」

 

と挨拶してみました。すると

 

「もちろん でもこの星の人達や動物や木々たちも、みんな名前はないんだ。相手を思い浮かべれば、どんなに離れていても伝わるからね。前回会った二人にも、いつでも話せるよ。」

 

と教えてくれました。

 

前回、彼らにお礼もちゃんと言えなかったので、話しかけてみようか、そろそろ暗くなるころかな…とか考えていると、

 

「ここでは、もっと楽しみたいと思えば、時間は伸びるよ。さっきのサバンナでも、君が全部の動物たちと触れ合いたいと思えば、その間日が暮れる事は無いよ。回りの動物たちも喜んで付き合ってくれるだろうし。」

 

ええっ~ と驚いていると、かなり可笑しそうに笑われてしまいました。

 

そのまま一緒に焚火の前でいると、私もただじーっとしているのが心地よくなって来て、穏やかに伝わって来る、地球の経験談を聞きながら、眠ってしまいました。

 

 

 

地球で黒猫と会話する

 

 

 

目が覚めると、ベッドの上にいました。ぼんやりしたまま夢だったのか、本当の経験なのかとまた考えていました。段々とそれはどっちでもいいような気がしてきました。でも、すぐにでもまた訪れたい気持ちでいっぱいでした。

 

 

 

今日はお休みです。いつもは出かけるのが嫌いで、一日中家の中でゴロゴロするのが楽しみだったのですが、春の明るい日差しに誘われて、ちょっと散歩してみる事にしました。

 

コンビニによって、サンドイッチとジュースを買って、近くの土手で食べる事にしました。

 

大きめの川の岸辺が公園になっていて、菜の花があちこちで綺麗に咲いているのが通勤電車から見えていました。

 

公園には、家族連れが何組か来ていて、子供が楽しそうな笑い声をあげていました。

 

ふとライオンが言っていた、地球のいい所という事を思い出しました。賑やかな笑い声は、あの星にはないものです。彼らもとても嬉しそうに笑いますが、ゆっくりと広がる波紋のように伝わって来ます。私には耳で聞いているのか、体の中の方から伝わって来るのか、まだ分かりません。

 

早速、買ってきたサンドイッチを頬張りながら、これも、あの星では必要ないんだよね…でもそしたらお店や、製造者とか困るかも、でも食べなくてよかったら、働かなくていいからいいのか…でも、みんな退屈しちゃうかも…とか色々取り留めない事を考えながら、子供達を目で追っていました。

 

気が付くと、真横に黒猫がいました。驚いて、

 

「えっ いつの間に…あの猫だよね。」

 

と、かろうじて声を出さずに聞きました。

 

「やっと気が付いた?」

 

「今、しゃべった? 私、あなたのいう事分かるようになったの?」

 

「みたいだね」

 

びっくりしすぎて、どうしていいかわからず、サンドイッチの具のシーチキンを出して、

 

「食べる?」と聞いてみました。

 

「僕は、ここでは結構グルメなんだ。飼い主は、かなり美味しい缶詰をいつもたっぷりくれるからね。外では食べないよ。」

 

「え~~ 飼い猫なの?」

 

また驚いて、声を出しそうになってしまいました。黒猫は、憤慨したように

 

「僕が、野良猫に見える?」

 

と言いながら、綺麗な毛並みを、さらに毛づくろいし始めました。

 

「今晩も行くの?」

 

と聞いてみると

 

「もちろん」と言いながら毛づくろいし続けています。

 

「何で、行ったり来たりするの? 向こうに行きっぱなしにはならないの?」

 

「こっちでも、質問攻めだね。」

 

「ごめん」

 

「こっちには、美味しい缶詰もあるし、沢山のメスもいるしね~。何より飼い主が悲しむだろ?この体が元気なうちはここにいるさ。」

 

「ふ~ん 食欲と、恋愛と家族ってかんじ? まるで人間と同じだね」

 

「地球っぽいって事かな。」

 

昨夜と同じように、面倒くさそうにしながらもちゃんと答えてくれました。

 

 

 

猫もそういうの考えてるんだ。私は、30過ぎたばかりの派遣社員で、今の生活に、大きな不満があるわけでは無く、かと言って満足している訳でもなく、なんとなく日々を過ごして、色んな事を先延ばしにしている感じです。なんか猫の方が、あの星でいる時と同じように、ちゃんと地球を楽しんでいる感じがしました。

 

あの星の人達は、景色や色んな事を楽しみながらも、その時々そのものを楽しんでいる感じがしました。私もあの星にいる時は、みんなと一緒に、そんな感じになれるのですが・・・戻って来ると全く元のままです。

 

あの、穏やかな充実感や幸福感はどこから来るのだろう。決して回りの環境ばかりでは無いような気がしました。

 

 

 

ぼんやりと考えていると、いつの間にか黒猫はどこかに行ってしまってました。

 

家に帰ったんだろうか・・・でも声が届かなくてもいいという事は、近くにいなくても話せるんだろうか・・・と考えていると

 

「当然」

 

と、どこからともなく聞こえてきたような気がしました。

 

「こっちではなんて呼ばれているの?」

 

と心の中で聞いてみると

 

「ミーヤ」

 

「家に帰るの?」

 

「昼寝は家のソファーでする事に決めてるんでね。」

 

セレブの家で、ふかふかの高そうなソファーで寝ているミーヤが思い浮かびました。

 

 

 

私は立ち上がり、その辺を歩いてみる事にしました。地球のいい所見つかるだろうか・・・遊んでいた家族連れが、お弁当を広げています。

 

川沿いの道をこんなにゆっくりと、あちこち眺めながら歩くのは、初めてかもしれません。こうしてみると、地球の春もかなりいい感じです。もうすぐ桜も咲きそうです。

 

 

 

その日は、心地いい疲れを感じ、早めにベットに入りました。まだ寝るには随分早い時間ですが、もし眠れたら、あの星に長くいられるだろうかと考えながら、目を閉じました。もうミーヤは行っているだろうか・・・やっぱり飼い主が寝てからなんだろうなと、黒猫の生活や、焚火小屋の事とかいろいろ想像してる内に眠ってしまいました。

 

 

 

気が付くと、私は焚火小屋にいました。

 

 

 

空飛ぶアルパカ

 

 

 

以前と全く同じように、ミーヤは膝の上に乗って、撫でてもらってました。まるで全く時間がたって無いようでした。

 

「早かったね。」

 

とミーヤが相変わらずふてぶてしい感じで、こちらを見ました。

 

「かなり早く眠れたから。あなたのように、起きている間でも好きなように移動できるといいんだけど。」

 

とミーヤを見ると

 

「その内、出来るようになるかもよ。今は出来ないと思い込んでるから難しいけど。」

 

と焚火の人から伝わって来ました。

 

思い込んでる・・・確かにそうだけど、起きている間にこっちに来たら、地球の私はどうなるんだろう。と考えてると

 

「時間は何の問題もないよ。ただ眠ってからこちらに来る必要が無いっていうだけさ。向こうに帰る必要がある時は、ちゃんとわかるよ。」

 

分かったような・・・今度帰った時、できるかどうか試してみよう。

 

外を見ると、雪が積もっていて、木々の枝の先まで白く覆われた、美しい白い森がお日様に照らされ、輝いていました。

 

綺麗だな~と見とれていると

 

「もしかして今年最後の雪かもしれないから、じっくり楽しむといいよ。」

 

「じゃあ、こっちももうすぐ春なんですか?」

 

「そう、ここの春もとても楽しいよ。期待してて。」

 

と、思い出すように、遠くの方をみつめました。

 

美しい雪景色に見とれながらも、その先の春にワクワクしてきました。

 

たっぷり楽しんだ後

 

「私ちょっとまた、動物たちに会って来ます。」

 

と言って、泉を思い浮かべました。

 

隣の泉にいたふわふわのアルパカみたいな動物の塊が気になっていたのです。

 

 

 

目の前にそのふわふわがあらわれました。光と空気を含んだような毛はとても美しく気持ち良さそうです。

 

「突然ごめんなさい。」

 

というと、みんな一斉にこっちを見て、微笑んだように思えました。

 

その内の一匹が、羽ばたきました。

 

「えっ はね?」

 

とびっくりしていると、みんなゆっくり羽を動かしました。

 

「ペガサスみたい」

 

と思っていると

 

「ペガサスは私たちと同じ星の住人です。時々この星にも来ますよ。」

 

と一番前にいた、羽のあるアルパカが伝えてくれました。

 

本当に、この星は新鮮で楽しい驚きでいっぱいです。

 

「どこから来たのですか?」

 

と聞くと

 

「地球ではアンタレスと呼ばれているようです。」

 

と答えてくれました。

 

「アンタレス…私が地球から来たと分かるのですか?」

 

「私たちの事に驚くのは地球の人だけです。」

 

またみんな微笑んだようでした。

 

「私たちに乗ってみますか?」

 

「えっ乗る事が出来るんですか?」

 

「ええ  空から見るこの星もきれいですよ。」

 

とまた微笑みました。

 

「ぜひ お願いします。」

 

すると、羽の生えたアルパカは、私の前で膝を折り、背中に乗りやすくしてくれました。

 

 

 

なんて心地いいんでしょう。埋もれてしまうくらいふわふわで、しかも、かなりの毛が生えているので、弾力もあります。

 

私がしっかりと首につかまると、羽をゆっくり動かして、少しずつ上昇していきました。

 

あっという間に泉は小さくなり、動物たちの区別はつきづらくなりました。気流に乗って優雅に旋回しながら進んで行きます。私にゆっくり眼下を眺められるようにしてくれているのが分かりました。

 

「ありがとう」という気持ちを込めて、首に頬を押し付けると、ライオンの時のように、じんわりと優しさが伝わって来ました。

 

 

 

美しい海や森、大きな湖、山々や川や滝も、ありとあらゆるものが美しく、輝いて見えました。私が今まで見たところだけでなく全てが美しいんだという事が良く分かりました。

 

 

 

前方から、以前私に水色の羽根をくれた青い鳥がやって来ました。

 

「楽しんでいるようですね。よかった。」

 

「ええ とても ありがとう」

 

グリーンやピンクの鳥も横に並んで、一緒に楽しんでくれています。本当に夢のよう・・・・夢なのかな・・・

 

 

 

一瞬のアート

 

 

 

雄大な空からの眺めを楽しんでいると、沢山の人が集まって、時々光っている所がありました。

 

「なんだろう?」

 

と思っていると、

 

「オーラのアートを楽しんでいます。」

 

と乗せてくれている羽のあるアルパカから伝わって来ました。

 

「オーラのアート?」

 

「ええ 自分の中の心地よさや素晴らしさとか表現したいものがあれば、あそこに行って見てもらいます。瞬間のアートです。」

 

「映像に残したりしないのですか?」

 

「ええ 素晴らしいものは次々生まれますし、それはその瞬間だからこそ素敵なんです。タイミングもアートの一部という事でしょうか。降りてみますか?」

 

「はい お願いします。」

 

 

 

初めて見るアートへの期待で、ワクワクしました。

 

近づいていくと、昼間なのにオーロラの様な物が見えました。群衆の後ろで膝を折り曲げて降ろしてくれました。するとみんな少し寄って一番前に通してくれました。

 

大きな岩の上に立っていた二人の人は、初めてこの星に来た時に私を案内してくれた人達でした。二人の上には、とても美しい色とりどりの光が、形を次々と変え舞っていました。驚きと嬉しさで一杯になりながら、美しさに見とれていると、私に気づいた二人は私の手を引いて、岩の上に乗せました。

 

「ようこそ。あなたと会った時の事や、あなたから伝わって来た喜びや感動を表現していました。」

 

「みんなとても気に入っていて、もう三回目です。」

 

と二人から伝わって来ました。

 

「私の?」

 

と驚いていると

 

「ええ あなたが加わってくれれば、もっと素晴らしいものになると思うのですが、一緒に表現してくれますか?」

 

「でもどうやって?」

 

「大丈夫です。」

 

と、私の手を取りました。三人で手をつなぎ輪になると、二人からふんわりとした温かさが伝わり、私の中を満たしていくのが分かりました。見ている人達の期待感も感じます。

 

三人の真ん中に、柔らかな光が現れ、段々と大きさと強さが増していきました。その光はどんどんと上空に広がり、青空に虹色のベールをかけたようになりました。光は強くなったり、弱くなったり、虹色の大波や小さな波が空に舞います。

 

回りからはさざ波のように、素晴らしい感情が伝わって来て、まるでみんなと一緒に表現しているようです。本当に私から出て来たものなんだろうかと思っていると

 

「そうです。私たちはお手伝いしているだけです。」

 

「もちろん見ている人達も、参加してくれています。」

 

と二人から、いつもより強く伝わって来ました。

 

 

 

空に広がった、薄れゆく虹色の光のアートを惜しむように見上げながら、会場は静かになって来ました。

 

 

 

しばらく余韻を楽しんだ後、次の人が岩の上に上がり、また一瞬の見事なアートを空に描きました。

 

日が傾き出すと、今度は太陽が美しい空を演出してくれました。岩の上に上がる人たちは、刻々と変わる空の色に合わせ、まるでリハーサルをしたように完璧なコラボを見せてくれました。

 

それは星空になっても変わりませんでした。色とりどりのオーロラと輝く星々は、美しいハーモニーを目で見ているようです。

 

 

 

いつの間にかアルパカたちはいなくなっていました。私は後ろにある木の所で、座って楽しむことにしました。

 

「いいですか?」

 

「もちろん」

 

「素敵な所に居ますね。」

 

「はい 特等席ですね。見る事が出来ない所にいる木々や花たちにいつも伝えています。あなたのショーもみんな大喜びでした。」

 

「ありがとう」

 

私は木にもたれ、また新たに始まった、光のコラボを見上げました。でもいつの間にか眠ってしまったようです。

 

 

 

ベッドの上で目覚めました。

 

私は段々と、どちらが夢なのか分からなくなって来ているように思えました。

 

地球での色んな事が、どうでも良くなっていました。それは地球が嫌になったという事では無く、逆に、あの星を楽しめが楽しむほど、こっちでも穏やかに楽しめるという感じです。

 

あの星にいる全ての存在の優しさや温かさから多くの事を学んでいるのかもしれません。

 

こっちにいる時は、この次はどこに行こうかと、まるで旅行の計画のように色々考えるのが楽しみになりました。

 

どこに行っても木々たちが旧友のように接してくれ不安が全くなく、誰かを思い浮かべれば、話せるので寂しさもありません。移動もらくちんで、こんなに楽しい旅行は無いかもしれません。思いついたらすぐ行けるので、計画を立てる必要はないのですが、あちこち行きたい場所や、会いたい人が増え続けています。

 

光に溶けたような感覚には随分慣れましたが、やはりまだ、頭の中は地球にいる時のままなので、驚いてばかりです。

 

地球にいる時にも、あの星の人達のように接したいと思っているのですが、完全に信頼しきるというのは難しいです。せめて身近なひとには出来るといいのですが・・・

 

 

 

ふと、私の地球でいる時のオーラってどんなだろうと思いました。鏡を見てみましたが、見えるわけもなく、あの星でいる時より綺麗なはずもないので、諦めました。

 

 

 

青い羽根

 

 

 

鏡に青い羽根が映っているような気がしました。見覚えのある美しい羽根です。夢の中で青い鳥に貰った羽根ですが、どこかで無くしてしまいました。まさかと思って、あたりを見回しましたが見当たりません。ミーヤが行ったり来たり出来るのなら、もしかしてあの羽根もこっちに持ち込んでいる可能性があるかもしれないと思い、もう一度くまなく探してみました。

 

その羽根は、ベッドの中にありました。なぜ鏡に映ったのか分かりませんが、羽根を手に取り、あの青い鳥に感謝するつもりでキスしてみました。すると、青い鳥がクルクルと羽根をくれた時のように嬉しそうに回っている光景が、浮かびました。

 

実際に、向こうで私を感じてくれているのだと分かりました。

 

羽根を持って、もう一度鏡を見てみると、鏡の中に岩の上で見たような美しい虹色のオーラが光っていました。

 

地球でも、こんなきれいなオーラでいられるという事に、じんわりと心の奥の方から嬉しさが込み上げてきました。

 

何度か鏡を覗いた後、そっと箪笥にしまいました。

 

 

 

会社の帰り、青い羽根を入れるケースを捜しに行きました。小さな木の箱に、綺麗なペイントが施され、ガラス球を埋め込んだ、素敵な箱に出合いました。

 

帰って早速入れてみると、専用の箱のようにぴったりです。

 

 

 

青い羽根を、ケースに入れたり、出したりしながら楽しみ、またキスしました。

 

 

 

私はあの丘の上にいました。

 

丘の木には、青い鳥やグリーンとピンクの鳥がいました。

 

驚いている私に

 

「もう好きな時に来られますね」

 

と青い鳥が羽ばたきました。他の鳥たちも合わせるように羽を動かしました。私は青い羽根を持ってない事に気づき、あたりを捜しました。

 

「あの羽根は、地球にあるのですか?」

 

「そう ここでは必要ないから。」

 

「その為に、くれたのですか?」

 

「そうではないのですが、あなたの思いが通じたという事でしょうか。私はただここの事を思い出してもらえればと、思っただけです。夢では無い事に気づいてもらえればと。」

 

「あ~もう夢だとか、思い過ごしとか自分をごまかすことは無理みたいですね。あの羽根があればオーラとかも見られるんですね?あれは私の地球でのオーラですか?」

 

「あなたの魂のオーラです。地球で言われているものと少し違うかもしれません。」

 

「あのオーラのショーはまだ続いているのですか?」

 

「ええ ほとんど毎日毎晩誰かがお披露目しています。この瞬間も多くの人の感情が生まれていて、尽きる事がありません。どれも素晴らしいものです。」

 

「あの 帰る時はどうすれば・・?」

 

「あなたの意志で帰れます。ここで移動するときのように。あなたは、ここの星の人達のように好きなように動けます。もうこの星の住人という事でしょうか。ただ、地球でいる時はまだ、あの羽根が必要になるかもしれません。」

 

 

 

三羽の美しい鳥は旋回しながら飛んでいきました。

 

私は丘からの景色を見渡しながら、「ここの住人?」と不思議な感じがしました。別に地球に帰れなくなるわけでは無いので寂しさとかは無いけれど、思ったほど嬉しくなくて、自分でも驚きました。自分で思っている以上に地球が好きという事でしょうか。

 

 

 

後ろにいた、あの大きな木に触れ見上げました。自分のこの感情が何なのか教えて貰いたかったのです。

 

すぐに、木の温かさが伝わって来ました。

 

「今までと、何も変わる事はありません。あなたは初めから全てを受け入れていました。だからこの星に来たのです。感じて見て下さい、いつもここにいる時のように。地球でいる時のように頭で考えると、戸惑うかも知れませが、何の問題もありません。ただ受け入れればいいだけです。」

 

私はスーッと落ち着いて来て、当たり前の出来事のように感じて来ました。回り切らない大きな幹に、腕を回し感謝しました。

 

 

 

取りあえず地球に戻ろうと、自分の部屋を思い浮かべました。

 

一瞬で私は戻っていました。

 

でも回りを見ても青い羽根がありません。散々探した挙句、もしかしてと思って箱を開けてみました。すると、そこには当たり前のように綺麗に羽根が納まっていました。

 

この箱が気に入ってくれたのでしょうか。

 

 

 

青い星の住人

 

 

 

夜になり、今日はベッドに入る前に、私は再び青い羽根を取り出し、青い星の事を思い浮かべました。

 

 

 

丘の木の下にいました。

 

「お帰りなさい」

 

木が優しく、葉を揺らしました。

 

「ただいま。私の体はどうなっていましたか?」

 

「あなたが、自由に移動出来るようになったので、魂に戻りました。ここにいない間、体を休める必要はなくなったのです。」

 

なんとなくしか分からなかったけど、あいまいに微笑みながらお礼を言いました。バレバレだと思うけど、また優しく、さわさわと葉を揺らしてくれました。

 

 

 

焚火の人の所に行って見ました。

 

雪はすっかりなくなり、木の芽が大きくなっていました。光を包み込んだようなその芽は、どんな葉や花を見せてくれるのか楽しみです。

 

「やあ ここは季節の移り変わりが早いから、来るたびきっと楽しいよ。」

 

「ほんと、今度来たときはもう花が咲いてそうですね。」

 

もう焚火は無かったけど、ミーヤは相変わらず、膝の上に乗っていました。青い羽根の事や、今まであった事、そしてこの星の住人になったと言われたことなどを聞いてもらいました。

 

「おめでとう」

 

「ありがとうございます。」

 

と戸惑いながら答えました。

 

「あまり、深く考えなくていいんじゃない? 自由になったという事で。」

 

と焚火の人が言うと、ミーヤが

 

「やっと、僕と同じように動けるようになったという事かな。」

 

と言って、膝の上で向きをかえ、反対側の耳を差し出していました。

 

「そうなんだ。これから色々教えてよね。」

 

「もう十分好きにやってて、あんまりその必要はないんじゃない」

 

「そうかも」

 

 

 

二人のおかげで、わずかに残っていた戸惑いもすっかりなくなり、今までと違う感じがするのか、他の場所にも行って見たくなりました。まず、初めてこの星に来た時立っていた、滝の前の岩の上に行きました。

 

 

 

その滝には、以前のようにいくつもの小さな虹がかかっていました。あの時の不思議な感じが蘇って来ます。そして、こんなに素敵な所にずっといられたら、と思った事思い出しました。

 

「夢が叶ったんだ・・・・・」

 

初めて、眠った木の下に行きました。

 

優しく迎えてくれたように感じました。何も言う必要はないようです。

 

木の下に腰を掛けました。もうあちこち欲張って、行く必要はなくなったんだと思いました。今までとはまた違うゆったりした気持ちになりました。

 

ゆっくりと深~い呼吸をしたくなりました。木々たちのように地中深く、そして空の果てまで、自分が伸びていくような気がしました。自分がこの星そのものの様な気がしたのです。

 

この星の住人という、本当の意味が分かったような気がしました。

 

そのままゆっくり呼吸しながら、くつろいでいると、沢山の布が思い浮かびました。

 

 

 

オーラの布

 

 

 

羽のあるアルパカに乗せてもらっている時、沢山の布が、風になびいている場所がありました。布を作っている人がいるとの事でした。布をくれた人に会えるかもしれません。

 

 

 

沢山の美しい布がかかっている、木の前にいました。

 

私がこの星に始めて来た時、貰ったのと大きさは一緒ですが、どれ一つ同じものはなく、全てがとても美しく輝いて見えました。

 

「ようこそ」

 

布を沢山まとった木が話しかけてくれました。

 

「とても気持ち良さそうですね。」

 

「ええ とても」

 

布と枝や葉が微妙に揺れました。そこへ、私に布をくれた人がやって来ました。

 

「お久しぶりです。」

 

「先日はこの布、ありがとうございました。」

 

「いいえ あなたのオーラで、ますますその布は美しくなりましたね。」

 

その人は微笑みました。

 

「えっ」

 

意味が分からなくて、戸惑っていると

 

「ここにある布は全て、オーラを物質化したものです。それを身にまとっていると、その人のオーラの美しさが加わります。」

 

「物質化?」

 

「ええ そうです。その布は、あなたを案内した二人のオーラから作った物です。今はあなたのオーラが加わって、あのオーラのアートのショーの時にとても似ていますね。本当にあのショーは素敵でした。」

 

「見てくれていたんですか? どうもありがとう」

 

「よかったら、今のあなたのオーラを布にしてみませんか?」

 

「私のオーラも物質化できるんですか?」

 

「もちろんです。あなたはあなた自身でいてくれれば、物質化は私がします。」

 

「私自身でいる?」

 

「ええいつもやっている事です。」

 

その人は、ずっと布のように柔らかに微笑んでいます。

 

私自身でいるという事を考えていると、その人は私の手を取り、両手をつなぎました。私は岩の上にいた時のように、何かに満たされていきました。そして全てを受け入れている感覚になりました。私は目をつむりその心地いい感覚を味わいました。しばらくすると

 

「ありがとう」

 

と手から伝わって来ました。つないだ手に、重さを感じないほど、薄く柔らかな布がかかっていました。

 

「素敵な布が、出来ましたね。よかったらお持ちになりますか?」

 

その人は嬉しそうに微笑みました。私は少し迷ってから

 

「とても綺麗ですが、今はまだ、この布を使いたいと思います。」

 

私は、自分が身に着けている布を、少しつまみました。

 

「そうですか。とてもお似合いですもんね。ではこの布も木に掛けさせてもらいます。いつでも、どれでもお持ちになって下さい。」

 

「ありがとう。布を物質化できるのはあなただけなのですか?」

 

他の人が見当たらないので、聞いてみました。

 

「いいえ 多くの人が布を作れますし、布だけでなく色んな物を物質化出来ます。ただ物質化する事にあまり興味が無いだけです。」

 

どうして? とびっくりしていると、その人は続けて

 

「ここでは、物質はほとんど必要ありませんし、その時その時を楽しむのが忙しいというか…別に何もしなくてもいいのです。」

 

「ああ、本当にそうですね。ここの人達はただその時を楽しんでいる感じがします。素敵ですね。」

 

「あなたもそうですよ。」

 

と可笑しそうに笑いました。私はとても嬉しく感じました。またこの星の人間だと感じられたからです。

 

「何か作りたくなったら、おっしゃってください。きっとあなたも素敵なものが作れると思います。」

 

「どうもありがとう」

 

私はお礼を言って、丘の上の木の所に行くことにしました。

 

 

 

何にもしない

 

 

 

何もしないで、ただその時を楽しむという事を、じっくり考えてみたかったのです。

 

木に抱き付いて、挨拶をし、大きな幹にもたれました。

 

布の人はあんな風に言ってくれたけど、この星の住人になったと喜んでいたけど、ここの人達のようにその時を楽しんでいるようには思えません。やっぱりまだ旅行者気分です。地球だと尚更何もしないと、すぐ退屈してしまいます。

 

ふと地球でも木々たちはここの人と同じように過ごしているんだなあと思っていると、

 

「地球の木々たちも、私たちも決して何もしていない訳ではありません。それはあなたもですが…存在しているだけで、呼吸しているだけで、何かの役に立っているのです。だから、あなたはここでやりたい事は何でも出来ますが、何もしたくなかったら、何もしなくてもいいのです。」

 

背中からやさしさと一緒に伝わって来ました。そうなんだ・・・私は何もせず、しばらくじっとしている事にしました。脊中から伝わって来る木々の温かさや大地から伝わって来る安心感とか色んな事が、また沁みる様に感じられるようになって来ました。このままずっといると木々たちのように宇宙のエネルギーとかも感じられるんだろうか・・・

 

「もちろん」

 

木と大地から同時に伝わって来たような気がしました。

 

不思議な事に、ただ存在して、自分自身を感じようとすればするほど、回りのエネルギーも強く感じられます。どんどんと境が無くなっていく感じです。

 

「すべては繋がっているからです。私たちとあなたを隔てるものは、何もないのです。」

 

どれ位そうしていたでしょうか、心地よくなりすぎて、眠くなって来ました。今回は眠る前に自分で戻る事にしました。

 

 

 

地球での過ごし方

 

 

 

私は羽根を持ったまま、部屋にいました。地球では全く時間がたって無かったのです。以前から、寝ている間ずっと行っていたわけでは無いのかもしれません。

 

心地よさが残っている間に、ベッドに入る事にしました。

 

あっという間に眠ってしまったようで、気が付いた時には外が明るくなっていました。

 

丘の木が教えてくれた事は、私の心の奥の方が反応した感じで、それは目が覚めても続いていました。

 

私は、通勤の時や仕事の合間に、何もしなくても役に立っているという事を考えていました。きっと仕事しなくていいとかいう事と意味合いが違うんだろうなとか、頭で考える事ではないのかもしれないとか、何の結論も出るわけもないのですが…その時その時を楽しむというのは、仕事でも遊びでも地球にいる時もいい感じで役に立ちそうです。

 

私はその日、他の事考えながら、色んな事をするのを止めて、なるべくそこに、心も頭も体も一緒にいる事にしました。

 

すると一日がとても速く感じられました。そしていつもより楽しく感じられたように思います。何かいつもと違う事があったというわけでは無いのですが・・・

 

あの星でもこんな風に過ごせば、みんなともっと同じように感じられるかもと、行くのがまた楽しみになりました。

 

 

 

光る羽根

 

 

 

帰って早速、青い羽根を取り出しました。もしかしてもう必要ないのかも知れないけれど、おまじないみたいな感じです。

 

 

 

私はまた丘の上にいました。

 

大きな木にあいさつをしました。

 

「地球でも楽しまれたようですね。」

 

「ええ、この星のみんなのおかげです。そしてここでも、もっと楽しめそうな気がしています。」

 

「きっと、みんなも喜んでいます。」

 

とても嬉しそうに葉をわさわさと揺らして、喜んでくれました。

 

私は焚火の人の所へ行って見ました。何だか久しぶりの様な気がします。

 

小屋の回りは花盛りです。小川の近くにある大きな石に座っていました。横で、ミーヤが丸くなっています。

 

「やあ」

 

「春ですね。本当にどこを見ても綺麗ですね。」

 

大きな木も小さな木もみんな優しい色の花を付け、足元にも小さな草たちが、小さな花を付けて、ふわふわの絨毯のようになっています。

 

ミーヤがちらっとこっちを見ました。近くに来た綺麗な蝶々に飛び掛かりました。ここにいても猫の習性は変わらないようです。

 

岩から飛び降りるとそのまま花の絨毯の上をゴロゴロと無茶苦茶気持ち良さそうに転がっています。

 

私も真似をして、草の上に寝転がりました。そしてゴロゴロしてみました。とても優しい香りが鼻をくすぐります。

 

「最高に気持ちいいね。」

 

とミーヤを見ると

 

とまた岩の上に戻り、今度は焚火の人の膝の上に乗りました。

 

焚火の人は、焚火の前でいる時のように、目の前にある小川や花々を見ながら、ミーヤを撫でていました。二人ともとっても心地よさそうです。

 

 

 

小川の向こう側の木に、鳥が数羽止まりました。羽根を繕いながら、のんびりとしています。花盛りの木は鳥たちにとっても、居心地がいいのかもしれません。一羽の鳥が私の方に飛んで来ました。白っぽく見えていたけれど、よく見ると向きによって虹色に光っています。中から輝いているようにも見えます。見とれていると、

 

「よかったら、私の羽根もどうぞ。」

 

と言って、綺麗な青い羽根より少し大きな羽をくちばしで、差し出してくれました。

 

 

 

「ありがとう。青い鳥に羽根をもらった事知っているんですか?」

 

「ええ、青い鳥はあなたが気に入ってくれている事とても喜んでいます。」

 

貰った羽根を、空に向けて差し出すと、優しく輝いて本当に綺麗です。

 

「喜んでくれてありがとう。あそこにいる内の二羽の羽根は、私の倍ぐらい生きていて、もっと輝いてるんですよ。年を重ねれば重ねるほど、輝いていくんです。」

 

その鳥は小川の向こうの木を振り向いてみながら言いました。私もそっちを見ていると、また一羽こっちに飛んできました。もう羽根を口にくわえています。そして着くなり私に輝くその羽根を差し出しました。

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして、喜んでもらえると嬉しいけれど」

 

優しく光る羽根と両手に持って、お日様にかざしました。どちらもキラキラと本当に綺麗です。見とれている間に、みんな飛び立ちました。私の上で旋回して、あっという間に空の彼方に、飛んでいきました。私は羽根を持ったまま大きく手を振ると遠くの方でもう一度旋回してくれました。

 

「年をとればとるほど綺麗になるなんて、無茶苦茶羨ましい~」

 

と光る羽根を見ながら思っていると、ミーヤに鼻で笑われたような気がしました。「猫にはわかんないよ」と思ってると、焚火の人が笑って、こっちを見て

 

「地球のお年寄りって、素敵に見えたけど…地球の人はそうは思ってないの?」

 

「ええ、みんなちょっとでも若く見られたいとか、若々しくいたいとか思ってます。」

 

「そうなんだ。変わってるんだね。」

 

「そういえば、ここの人は年齢とかあまり分からないですよね?」

 

「あんまり関係ないからね。魂は色んな所に行くし・・・人によって時間の流れ方が違うから。」

 

「えっ 人によって、年の取り方が違うって事ですか?」

 

「まあ そういう事になるかな。自分の好きなように時間を重ねていけるって事かな。」

 

「じゃあ誰も年を取りたいと思わないんじゃないですか?」

 

「う~ん あんまり気にしてる人は少ないかも・・・さっきの鳥だと、早くキラキラの羽根になりたいと思うと早く年を取るとは思うけど。」

 

また、理解しにくい事が一つ増えてしまいました。頭で考えようとすると、こんがらがるばかりです。慣れてくると、段々とここの人達のような感覚になっていくのでしょうか。

 

 

 

それから、ゆっくり花ざかりの森の中を散歩しました。ウサギやリスっぽい小さな動物に沢山出会い、面白い花を咲かせている木や、草の所に案内してくれました、蝶ちょたちもたくさんついてきます。持っている羽根に止まってる、小っちゃな青い蝶ちょもとてもかわいいです。

 

たっぷり楽しんで、自分でもらった羽根を、持って帰れるのかどうかわからなかったけど、しっかり握って、地球に帰る事にしました。

 

 

 

青い星に行く前と同じように、私は部屋にいました。残念ながら羽根は二本とも持っていませんでした。でも青い羽根もありません。もしかしてと思って、箱を開けると青い羽根を真ん中に綺麗に三本ならんでいました。余裕のあった空間がぴったりとおさまりました。

 

 

 

森の中で

 

 

 

私は布団の中で、時間の事を考えてみました。いつも青い星の事考えても、答えが出てくる事は無いのですが、なんとなくわかった気になったり、なんとなく楽しくなってきたりします。

 

地球でも好きな事をしていたり、今日みたいにその時に集中してみたりすると、とっても短く感じたりします。それに近い事なのかなとか、思いをめぐらしているうちに眠くなって来ました。やっぱり答えは出ないようです。

 

 

 

気が付くと私はいい香りのする、原っぱにいました。寝る前にまたあの草の上を転がりたい…今度行く時もまだ春だろうか…とか思っていたからでしょうか、直ぐに戻って来てしまいました。

 

そこは小屋の前では無く、森の真ん中に開けた小さな原っぱでした。ウサギたちが案内してくれたところです。そのまま寝転がって、しばらく回りの色んな物を感じてみる事にしました。

 

体に触れている草たち、少し離れている木々たち、そして森の動物たちや虫たちも私の事に気が付いて、私をそっと見守ってくれているようです。

 

私は、また全てに包まれている感じになって来ました。

 

木々や動物からもらっていた優しさを大地からも感じられるようになって来たようです。まだ分からない事は分からないまま、そのまま受け入れ、それでも何かに満たされている感じです。寝返りを打ってうつぶせになり、頬をつけて両手で草を撫でながら、大地と草にお礼を言いました。起き上って、回りを見ると、待っていてくれたリスやてんとう虫が来てくれました。木々たちも花をわずかに揺らしています。

 

「ありがとう」

 

と言って、リスたちを両手で迎えました。

 

一匹の小さなリスが、私の腕を駆け上り、肩に乗りました。すると、もっと小さなリスが、頭まで上りました。ほとんど重さは感じません。前を飛んでいる蝶ちょに、手を伸ばすと、指先に止まってくれました。まるで、何かの絵本に出てくる場面のようです。

 

やっぱりこれは夢なんじゃないかなと思ってしまいます。

 

リスや蝶ちょと気持ちが通しているというよりは、一つにつながっている感じです。指先に止まった蝶ちょをじっと見ていると、私の指と区別する必要が無いような気がしてきました。

 

柔らかさの中で、全てが解けていってしまいそうです。すべての輪郭が、ぼやけてきた様な感覚にさえなって来ました。

 

私は私でなくても、リスでも蝶ちょでもいいんじゃないかと思えてきます。大きな木になりたいとさえ思います。感じているものが、みんな同じだと分かっている自分がいました。同じ安らかさや温かさを体の芯の方から感じているのが分かります。

 

その感覚にどっぷり浸かっていると、明るい太陽の光に、本当に回りも自分も時間さえも、溶け出してきた様思えて、心地いいのに、ちょっと怖くなってしまいました。

 

 

 

気が付くと私は布団の中にいました。思わず手を見ると、当たり前だけど、いつもと変わりませんでした。

 

もしあの時、怖がらなかったら、どうなっていたんだろう?

 

光に溶けたらどうなるんだろう?

 

あの時思った、時間が溶けるという感覚が、遠くに行った感じでぼんやりとしか思い出せません。

 

 

 

とける

 

 

 

どうしても、あの感覚をもう一度味わいたくて、すぐにまた森の中の原っぱに行ってみました。

 

そこにはもう誰もいませんでした。さっきよりも少し明るく感じる、空間がぽっかり空いている感じでした。

 

沢山の花びらが、舞い落ちて来ました。

 

私は原っぱの回りにある大きな木を見回しました。

 

満開の花を付けた大きな木にリスたちがいました。私が手を振ると、するするっと素早く気を下りて、やって来てくれました。花の蜜を吸っていた、青い小鳥や蝶ちょも一緒です。

 

少し離れただけなのに、会えたことがとても嬉しくて、涙が出てきました。この場所が美しすぎたからかもしれません。花びらは途切れることなく、ひらひらと舞い続けています。

 

ただここにいられる、存在できるという事に、感動している自分がいました。

 

私は回りの全てに、自分自身にさえ感謝の気持ちがこみ上げてきました。そしてここの星の人達はずっとこんな気持ちで過ごしているという事に気が付きました。

 

何となく感じていた、温もりや受け入れられているような感覚、やっとはっきりとわかったようです。

 

この星であった人や全ての存在に、感謝を伝えたくなりました。でも、それはもう十分伝わっている事も分かりました。

 

私たちはこの星そのものだと言っていたことを思い出しました。

 

星の輝きは、そこにある命一つ一つから出来ていると。

 

私もこの星の輝きに加われたように思えました。

 

 

 

 

 

私は、初めてこの星に来た場所に戻ってみました。

 

 

 

滝の前の大きな岩の上にいました。私の肩には、リスが乗ったままでした、そして小鳥や蝶ちょもついて来てくれました。

 

 

 

私は、全てとがっていました。というより、私は全てでした。とても不思議な感覚でした。

 

全ての輪郭が光って、あやふやになったような、一つの大きなエネルギーの塊になったこの星そのものに戻っていくような感じでしょうか。

 

自分と何かを区別する必要も、何がいいとか悪いとか考える必要も無かったのです。

 

私はただ全てを信頼し、ゆだねるだけ、ただ存在するだけでいいんだと感じました。

 

全ては同じでした。とても個性的だけれど同じなのです。

 

「全ては大きな木の、葉っぱのようなんだ」と思っていると、

 

いつも優しく話してくれる木の、葉がそれぞれに動き、色んな色に光って見えました。

 

木全体も今にも動きそうなくらい喜んでくれているのを感じます。でも言葉はありませんでした。

 

もう必要なかったのです。

 

私たちには、何の違いも無かったのです。

 

私の中にも、同じくらいの喜びがありました。

 

私だけの喜びでは無く、すべての喜びが私の中にあったのです。

 

 

 

私は部屋に戻りました。不思議な感覚のまま心地よさの中で、じっとしていました。

 

あの感覚は、私に強さの様な物を、何かゆるぎないものを与えてくれました。それはきっと、揺るぎのない愛なのだと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

今私は、地球という青い星に、不便さと複雑さを楽しみに来るように、なっています。

 

愛すべき地球に来るのが楽しみです。

 

 

 

            

 

                最後まで読んでいただき

                   ありがとうございました